2007年6月11日
退職金を見直したい

 退職金は賃金と異なり、退職者が出たときに始めて問題となるため、比較的に重要な問題と思われない方が多いようです。ただ、生命保険会社等が「退職金、退職金」としきりに言ってくるので少し気になる程度かもしれません。

 退職給付債務の問題がクローズアップされて久しいですが、そうした例を持ち出すまでもなく、退職金問題は改革を遅らせれば遅らせるほど問題が大きくなります。
 中小企業は、この退職金問題にいま本腰を入れて取り組むべきです。新しい退職金制度は、時代に合ったものでなければいけません。

 「現在の働きは、現在の賃金と賞与で精算する」というのが時代の流れですから、退職金のウエートづけは、給与・賞与に比べ小さくなる方向だと思います。

 働く人の就労意識も変化しています。終身雇用制が徐々に崩壊し、労働者の中にも生涯一つの会社で勤務しようという考え方が薄れてきています。

1.退職金制度を導入した目的は?
2.退職金は、何に有効なのか?
3.従業員は、退職金として受けとることは有利なのか?

 これからの時代は「退職金がないというわけにはいかないが、その金額は最低限度で良い」という考え方で良いのではないでしょうか?

 「401K」「中小企業退職金共済」「特定退職金共済」「税制適格年金」「厚生年金基金」など
退職金制度には、多く種類があり、全部を理解することは困難です。しかし、よくわからないからといって何もしないでいると、「気がついたときには対策がたてられないほど、会社の状況が悪化している」ということにもなりかねません。

 まず、今後10年間に発生する退職金の金額を計算して下さい。そして、問題点を正しく理解し、打つべき対応策について、考えておきましょう。



そもそも、退職金を支給する目的は?


感謝の気持ちを込めて

 「永年のお勤めご苦労様でした。」の気持ちを形に…。

早期退職の防止長期勤続

 退職金は、勤続年数が長ければ長いほど、多く支給されます。転職せずに、定年まで勤め上げた方が有利な制度です。
 勤続3年未満は退職すると支給されないのが一般的です。

解雇時の生活資金

 解雇など会社都合の場合は、退職金の支給率が高いのが会社が一般的です。
 つまり、退職金には解雇時の生活資金的な要素があります。
 
社会保険料が掛からない、退職所得控除が大きい

 退職金は、従業員にとっても有利な所得です。退職金には社会保険料が掛かりません。さらに、所得控除が大きく、税金でも有利です。

<参考>
静岡県の現状(平成15年3月調査)

@退職金制度の導入状況

 退職金制度は83.3%(前回調査、93.2%)の事業所で導入されています。
 
A退職金の支給形態

 イ.一時金のみ 75.4%(前回53.7%)
 ロ.併用    22.4%
 ハ.年金のみ  2.2%

B退職年金制度の状況

 イ.適格退職年金  63.9%
 ロ.厚生年金基金  46.2%
 ハ.企業独自の年金 7.0%
 ニ.確定給付年金 5.1%
 ホ.確定拠出年金 1.3%

C定年時のモデル退職金 ←あくまでモデルの平均です。

※モデル退職金は実体より高めです。理由は大卒なら大学卒業からすぐ入社して定年まで順調に昇進しながら勤め上げた方をモデルにしているからです。

 イ.退職一時金と退職年金の併用の場合
モデル退職金総額 H15年調査 H13年調査 H9年調査
イ.大卒男性 1,552万円 2,107万円 2,601万円
ロ.高卒男性 1,464万円 1,957万円 2,386万円
ハ.大卒女性 1,422万円 1,934万円 2,205万円
ニ.高卒女性 1,333万円 1,753万円 2,043万円
 

適格退職年金は2012年で廃止

適格退職年金は、5年以内に廃止!

 中小企業の退職金として使われてきた、適格退職年金が2012年で廃止されます。適格退職年金に加入している企業は、必ず何かに移行しなくてはなりません。しかし、その移行は驚くほど進んでいません。

(1)適格退職年金とは?


 企業と生命保険会社又は信託銀行との間で締結される退職年金に関する契約のこと。
 契約内容が法人税法に定める適格要件を満たしていた場合には、掛金等の損金算入などの優遇措置が認められます。

(2)適格退職年金には、3つの利回り

@予定利回り

 掛金を計算するための利回り、一般的に5.5%会社が従業員に保証している利回りです。

月額掛金 5,000円を18歳から60歳まで積立が場合の差

 年利 5.5% →   925万円
 年利 1.5% →   348万円

不足額577万円が会社負担
A保証利回り

 生命保険会社が会社に保証する利回り、0.75%〜1.5%(一部1.70%)

※信託銀行などの特別勘定の場合はなし。


※資金の運用機関である生保が5.5%を確保できたのは93年度まで、94年度からは運用の保証利回りは4.5%へ下げ、96年度からは同2.5%、99年度からは同1.5%、2002年から0.75%にまで下がりました(会社毎に若干の違いがあります。)

B実績利回り…実際の運用利回り。 

 実績利回りが、予定利回りを下回れば積立額が不足します。
 ※生命保険会社の事務手数料、信託銀行の運用報酬が掛かります。
 ※本人掛金を除いた部分について1.173%の特別法人税が課税されます。(現在、課税停止中)


逆ざやを解消するには莫大なコストが…

 
1,000万円の退職金を用意するために必要な掛金
金利 毎月の掛金
5.50% 5,500円
4.50% 7,100円
2.50% 11,500円
1.50% 14,400円
0.75% 17,000円
42年勤続,特別法人税なし
 金利の逆ざやは極めて深刻です。
 積立金不足を解消するため予定利回りを1%引き下げると掛金が20%以上も上がるといわれています。
 

退職金債務って?


 退職給付債務(P.B.O)…退職金は勤続年数などに応じてその額が計算されることから、従業員が入社してから現時点までの勤続年数に対応した労働の対価として、従業員に対してすでに発生している企業の債務であるとする考え方。
 ところで、退職給付債務も、その計算に用いる割引率を5.5%にするのか、1%にするのかによって天と地ほどの差が生じます。

平均残存期間20年 1000万円に必要な原資 差額
割引率 5.5% 0.34273 3,427,300円 約476万円
1.0% 0.81954 8,195,400円

※予定利回り5.5%の適格退職年金の場合は、5.5%の割引率で退職給付債務も計算されています

 退職給付債務は事実上過小評価されているのです。
 だから、償却しても償却しても毎年膨れあがるのです。


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